唐澤塾
唐澤豊が情報通信技術+経営術+人生術+創造性を中心に一期一会を追求する私塾
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躾は能力に勝つ
以下の投稿が日本躾の会の会報「ふれあい」#365、2017年5月号に掲載されました。

躾は能力に勝つ

 先日、テレビ東京で放送された「世界ナゼそこに日本人」という番組で、南米コロンビアの超危険地帯で町の人々のために奮闘する日本人男性が紹介された。

 それはコロンビアのスラム街に十三年間住む三七歳の横井研二さんで、日本人の父親とコロンビア人の母親の間にコロンビアで生まれ、祖父母がスラム街に住んでいたため、幼少のある時期、住んでいたという。

 ところが、十歳の時、コロンビアの治安悪化で、父親に会社から帰国命令が出て、横浜に住んだが、日本語が余り出来なかったため、イジメも受けた。しかし担任が素晴らしい先生で、クラスの生徒一人一人に別々の宿題を出し、一人一分野の日本語五個を研二少年に教えなさい、というもので、短期間に日本語の読み書きも出来るようになった。この先生の影響が彼に大きな影響を与えたことは言うまでもない。

 高校卒業後、横浜で偶然会ったコロンビア人女性と結婚し、小さなレストランを開いて大成功し順風満帆だった。そんなある日、貧しいコロンビア人の中年男性が国の職員を人質に取り、テレビ局を呼んで「私の子どもたちに食べ物を与えてくれないと、人質を殺す」と放送させたニュースを観て、これは何とかしなければと妻と長男を連れてコロンビアに移住した。

 最初の五年位は何をしたら良いか途方に暮れたが、自分が日本語を教えて貰った経験から、スラム街の子どもたちにボランティアで日本語を教え始めたところ、バイリンガルになった子どもたちは自信を持ち始め、それまで自分たちは大人になったらギャングや麻薬売人等になるしかないと思っていたが、映画監督や劇団座長になった人などが出てきた。

 日本の車等は人気があり、日本人は頭が良いから素晴らしい製品を生み出しているとコロンビアの子どもたちは思っていたが、彼は「それは違う、頭の良し悪しではなく、コロンビア人と違うのは学校での規律だ、その基は家庭の躾だ」ということを子どもたちに話し、それが学校の先生に伝わり、クラスの父兄に学校で「躾は能力に勝つ」という話をしたところ、企業や各種組織、政府関係などからの講演依頼が舞い込み、更にCNNのニュースで取り上げられたので、今では中南米各国からも講演依頼が殺到しており、今や彼は超有名人で町のどこに行ってもサインを求められたり、一緒の写真を頼まれたりし、お店では支払を受け取らないところも多いとのことだ。

 最近、日本人の躾がどんどん低下して問題だと思っていたが、外国と比較したら、これでも日本は良い方で、全く躾のなされていない国も多いということだ。日本企業の業績低迷や経営破綻等も激しいが、渋沢栄一が唱えた「論語と算盤」の論語を忘れ、算盤にばかり力を入れている経営者が多くなったが、横井さんが言う「躾は能力に勝つ」ということを企業経営者も考え、企業倫理を再構築すべきだ。

 これからは、世界中に躾のコンセプトを輸出する機会がある。それにはまず「幸せに生きる」を主要な各国語に翻訳して啓蒙するのが良いと思う次第である。


参考情報:
テレビ東京「世界ナゼそこに日本人」:
http://www.tv-tokyo.co.jp/program/detail/201702/22422_201702202100.html

「幸せに生きる」:
http://karasawajuku.blog10.fc2.com/blog-entry-1044.html


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コンピューターは人間を超えるか?
以下の投稿が日本躾の会の会報「ふれあい」#360、2016年11月号に掲載されました。

コンピューターは人間を超えるか?

ポケモンGOとは

最近話題になっているポケモンGOであるが、

写真1ポケモンGOの待機画面

技術的には、AR(拡張現実)技術を使い、カメラから観たその場の映像の中にポケモンとそれを捕獲するためのモンスターボールが表示されることだ。

写真2ポケモン捕獲画面wAR2

この機能が、中国やロシアなど、自国の軍事施設等を米軍に監視される、と利用禁止措置を取っている国がある。しかし、この機能はポケモンを捕獲するには、距離感が掴みづらいので、殆どの利用者はこの機能を使わず、お仕着せの画面に切り替えて使っているから、カメラ機能を切れば良いだけだ。

写真3ポケモン捕獲画面1

捕獲用の道具を獲得するには、登録されている公共的な施設(神社仏閣、郵便局、公園など)の前や店舗前などに行く必要がある。これが新しい機能であり、引き籠りの若者が外に出る動機になったと各国から報告されている。
また、いつ、何をしたかという利用履歴(ぼうけんノート)や捕獲したポケモンの図鑑、手持ちの道具などの情報はクラウドに保存されており、不具合や操作ミスなどで、再起動や再インストールをしても、それまでの情報は保持されている。それが、米国政府機関により個人情報を覗かれるのではないか?と騒がれているが、このゲームに限らず、電子メール、SNS、ブログ等への投稿もテロ対策のために必要とあれば、今でも覗かれているので、殊更にポケモンGOだけの問題ではない。
そして、移動速度が歩行速度以上になると、利用制限を課すようなので、最初の頃、マスコミ報道にあったような自転車や自動車に乗りながら利用することによる事故の問題は、今は起きていないと思われる。利用者による歩きスマホで、自転車や自動車とぶつかる、という問題も、少し使ってみると、歩きながら利用することはポケモンの捕獲や道具を入手する

写真4ポケスポット

には不利なので、それもメール利用者などよりは寧ろ少ないと思われる。

利用を規制する企業も

ある国際的企業は、会社内だけでなく、通勤中も利用禁止令を出したという。就業中だけならいざ知らず、通勤中まで利用を規制するのは社員の自由を奪うことになり、行き過ぎだろう。自社の事業へのリスクを十分検討してから決断すべきではなかったのか?

ポケモンGOの新規性

ポケモンGOには事業方式の新規性ある。それはポケスポット(写真四)と呼ばれる道具を無料で獲得するための唯一の場所があちこちに設定されているのだが、実際に歩いて個々に確認するとびっくりする。その数の多さだけでなく、普通では見落としそうな路傍の石像、アーケードやビルの壁や屋上の看板やオブジェなど、様々なものの前に設定されている。既存の詳細地図には無いものが多数ある。
これらの写真を撮り、登録するのは相当な手間暇が掛るが、どうやって実現したのかとずっと疑問に思っていた。それは、利用者が申請して許可されたものが登録されるという利用者参加型で短期間に構築したのだと判明した。これは、ポケモンGOを開発した企業の前作ゲームが最初だと思うが、今後、様々な事業に利用者参加型が取り入れられるだろう。
日本マクドナルドは、全店舗をポケスポットにしていることで、集客効果が出ているそうだ。更に色々な企業との提携があると思われ、その点も注目される。地方自治体も観光客獲得のために提携を決めたが、消費者相手の企業も、従来の広告とは異なり、集客に直接貢献する手段として注目し始めている。
こうした新規性を持つ事業を一部の不心得者の存在だけから制限して良いのか?クールジャパンを世界に広げるチャンスではないのか?

コンピューターは人間を超えるか?

今、情報通信業界では「人工知能はどこまで進むのか、人間の能力を超えるのか?」と喧々諤々の議論がされている。人工知能を駆使した囲碁プログラムと韓国のプロ棋士が対戦してプロが負けたことも、議論に拍車を掛けている。
例えばホーキング博士は「今後百年以内に人工知能が人間を超えるだろう」と警告しており「人工知能が人類を超える時、人工知能に人類と協力する目的を持たせる必要があり、また人工知能の開発は人類が制御できるように進めるべきだ」と述べ、起業家のイーロン・マスク氏は「人工知能は核兵器よりも潜在的な危険をはらむため、我々は細心の注意を払う必要がある」と述べている。
学者・研究者への調査では、人工知能が人間を超えるのは時間の問題と大多数が捉えている。しかし私は、人工知能を考案するのは人間であり、故に人工知能は人間を越えられないと考えている。
最近、人工知能でやっている創作的活動も、良く考えてみれば学習と言う名の巧妙な盗作のようなものであり、それを許していいのか?という著作権法上の問題もある。
人工知能もコンピューターの最も知的な応用分野である。従ってコンピューターが人間を超えるのか?というと、計算能力などは既に超えているが、単純なことを早く行うように設計されているだけで、最先端の人工知能ですら、人間の創造性を超えることはできないと思うから、コンピューターがあらゆる面で人間を超えることはないと考えている。

ITのメリット・デメリット(後編)
日本躾の会の機関誌「ふれあい359号」に高度情報インターネット研究会の座談会、
後編が掲載されました。
TPPの議論の中で、遺伝子組み換え食品の問題について、私を含め、多くの人が誤解していると思いますので、
良く読んで頂ければ幸いです。


ITのメリットデメリット#2-1
ITのメリットデメリット#2-2
ITのメリットデメリット#2-3
ITのメリットデメリット#2-4

ITのメリット・デメリット(全編)
日本躾の会の機関誌「ふれあい357号」に高度情報インターネット研究会の座談会が掲載されました。

ITのメリットデメリット1
ITのメリットデメリット2
ITのメリットデメリット3
ITのメリットデメリット4
ITのメリットデメリット5

躾啓発の重要性を再認識
日本躾の会の会報「ふれあい」352号に下記投稿が掲載されました。

躾啓発の重要性を再認識 モヨ(株)代表 唐澤 豊

昨年十月三十日の朝日新聞デジタル版(ウェブサイト)の「声 どう思いますか」に長崎県の中学校教員(男性)が
「躾とは我慢を教えること」という投稿をして、議論になっていたという。その要旨は;
“登校中の小学生で、茶髪や奇抜な頭髪を見かける。中学校に来たら指導が大変だろうと思う。一般的に、そんな
子の親は「人に迷惑はかけてないからいいじゃないか」と言う。その論理に立てば、ピアスもネックレスも許される。
指導もいらない。校則が無い方が教員にとっては楽に違いない。本当にそれでいいのか。”
“「褒めて伸ばす」とか「個性の尊重」は悪いことではない。しかし、それは基本的な躾があった上での話だ。

私は、躾というのは子どもに我慢を教えることだと思っている。

そして、基本的な躾は親の仕事のはずだ。”
“保護者と教員の思いがすれ違うことが増えているように感じる。学校は集団で生活するところだ。子どもたちは
教科の学習をするだけでなく、社会のルールを学び、社会性を身につけていく。そのために我儘は殆ど許されない。
親は、学校での指導が何のために行われているのか冷静に判断して欲しい。”
というものだ。
私は中学校の教員がこんな考え方で生徒たちを指導していることにびっくりした。躾は決して我慢を教えることでは
ないだろう。こんな考えだから、世の中では躾は古い考え方だと嫌われるのだと思う。そして躾のためと称して酷い
体罰を与える親が増えるのだ。
更に、この投稿に対するコメントでも、岐阜県のNPO職員(男性)は;
“躾とは、多分に「押しつけ」だと私は思う。我儘を通すのが子どもの本性である。子どもの言い分に誠実に耳を傾
けつつも、毅然とした態度で臨むべき時は、妥協してはいけない。”
それに対して、神奈川県の高校教員(男性)は以下のようにコメントしている;
“髪を染めたり、ピアスをしたりすることが、なぜいけないことなのか。「校則で決まっている」「学校にふさわしくない」
「体を傷つける」など、教員は様々な理屈を並べたてる。”
“しかし、それは「あるべき生徒像」という教員の私的な好みや趣味を、子どもたちに押しつけているだけではない
だろうか。「我慢を教える」と言って正当化するのは、戦中の国民服やパーマ禁止を彷彿とさせる。悪しき統制主義
でしかないと思う。”
“学校で徹底しなくてはならない社会のルールというのは、「他人に迷惑をかけない」という公共の福祉の考え方の
範囲内であるべきだ。”
“茶髪やピアスなどについては、本人の決定に委ねる以外にない。それが、憲法十三条が要請している個人の尊重
の精神である。”
ということで、真向から反対している。私も「他人に迷惑をかけないこと」という考えで我が子を育てて来た。
また、島根県の介護福祉士(女性)は;
“身なりがどうあれば相応しいかは、社会に出る日が近づけば自ら学びます。学校は、子ども自身が学び取る力を
信じ、自分の頭で考えて判断する機会を奪わないようにするべきです。そして、子どもと一緒に考え、話し合って、
変えるべきルールは変えていき、社会は自分たちの力で変えられることも学ばせてはどうでしょうか。”
とコメントしている。この女性が指摘しているように、日本の学校教育で欠落しているのは「自分の頭で考えて判断
すること」「自分の考えを明確に主張すること」で、それが出来ない人が多いから、海外に出て活躍できる日本人も
日本企業も非常に少ないのだと私は考えている。
躾に対する誤った考えの人間が多いようなので、これからますます躾啓発が重要だと再認識した次第であり、
具体的に何をして行けば良いか、いくつかの案を考えているところなので、理事会に諮って相談して行きたいと思う。

唐澤豊@唐澤塾

日本躾の会「ふれあい」の巻頭インタビュー
日本躾の会の会報「ふれあい」349号の巻頭インタビュー「この指とまれ」に私のインタビューが掲載されました。

ふれあい「この指とまれ」P1
ふれあい「この指とまれ」P2
ふれあい「この指とまれ」P3
ふれあい「この指とまれ」P4
ふれあい「この指とまれ」P5
ふれあい「この指とまれ」P6
ふれあい「この指とまれ」P7
ふれあい「この指とまれ」P8
ふれあい「この指とまれ」P9
ふれあい「この指とまれ」P10
ふれあい「この指とまれ」P11
ふれあい「この指とまれ」P12

唐澤豊@唐澤塾
IT時代の今こそ躾を
以下は日本躾の会の会報「ふれあい」9月号に掲載された投稿です。

IT時代の今こそ躾を

女子高校生が出会い系サイトで知り合った中年男性に殺害されたという事件が最近起きたことは皆さんもご存知だと
思います。こういう事件が起きると、だからインターネットは怖いですね。自分も使いたくないですが、子どもにも使わ
せなくないですね。という意見が出て来ます。
しかし、インターネット上でも、使っているのは人ですから、実社会と同じです。実社会で子どもたちには「知らない大人
に声を掛けられても、着いて行ってはいけませんよ。何かくれると言われても、貰ってはいけませんよ。」と教えて来ま
した。インターネットでも同じです。ただ、インターネットの場合は、残念ながら現状では匿名性がまかり通るので、
年齢詐称、偽名、他人の写真を使ってなりすます、などが可能なため、実社会以上に気を付けなければならないのは
確かです。従って、出会い系サイトで交際相手を探そうなどということを避けるのは当たり前のことです。そうしたことを、
使う前に、きちんと教えておかないといけないのですが、親も先生も、インターネットについては余り詳しくない人も多い
ため、ちゃんと教えることができないのだろうと思います。それでも、パソコン中心の時代は、ある程度のことを教えて
いたと思いますが、今は、いきなりスマホを使い始める子どもも多いでしょうし、学校には持ち込み禁止のところも多い
でしょう。従って、スマホについて教えるのは先生ではなく親ということになります。しかし、親が教えるどころか、子ども
から教えて貰う場合の方が多いかも知れません。
今、若者たちに一番大切な物は何か?と聞くとスマホと答えるそうです。IT時代の今は、パソコンやスマホを使う場合
のルールを教えるのも躾の一環です。子どもたちがスマホは命の次に大事と思っているのであれば、スマホの社会
は実社会の縮図ですから、親が一緒に勉強しようと言えば、興味のあることなので、聞く耳を持つと思います。
また、社会としては、匿名制が詐欺や迷惑メールなど大きな社会問題になっているので、実名制に変えることをそろ
そろ真剣に議論すべき時ではないかと思います。実現する方法は既にあるわけで、テロの問題と同様に、悪までも
プライバシーを主張しますか?それとも安全・安心の方がいいですか?という選択をするだけのことなのです。


唐澤豊@唐澤塾

躾の専門誌「ふれあい」5月号の表紙
以下は「ふれあい」5月号の表紙に使われた写真の説明として書いたものです。

今月の表紙

「躾」というと難しいと思っている若い親たちが多いのではないでしょうか?細かいことに口を出して、ああしなさい、こうしなさいと言うと、今の子どもたちは、うるさい親だと思うでしょう。「人に迷惑を掛けないようにしようね」、「人に何かして貰ったら、ありがとうと言おうね」これくらいでいいのではないでしょうか。
写真は、片手を怪我した年下の女の子の手をそっと引いて歩いている男の子ですが、親たちが「手をつなぎなさいね」と言った訳でもなく、片手が不自由だから転ぶと危ないよ、と思った男の子がそっと手を差し出して、その手を素直につないだのだと思われる、誠に微笑ましい光景です。こうしたことが自然に出来ているのは、両方の親が基本的な躾をしているからだと想像されます。
私たちは人に限らず、動物でも、赤ちゃんは可愛いと誰でも感じ、思わず微笑みが漏れますが、動物たちでもそうであるようです。それは無垢で無防備である赤ちゃんは守ってあげたいと思うからでしょう。ですから「小さいもの、弱いものを守ってあげようね」と言わなくても、自然とそうした気持ちなるのだろうとも思います。赤ちゃんを見たら「可愛いね」と子どもに話しかけるだけで躾になると、この写真から学びました。

140316 おててつないで

唐澤豊@唐澤塾
東北被災地復興と原発事故収束
以下は日本躾の会の広報誌「ふれあい」2014年4月号に寄稿したものである。

東北被災地復興と原発事故収束

はじめに

東日本大震災の被災地復興が余り進んでいない。そして震災・津波の影響を受けて事故を起こした東電福島第一原発事故の収束も進んでいない。被災地以外に住む日本人は、大震災のことも原発事故のことも、忘れてもう無関心のようにも見える。私はどちらにも非常に関心はあるが、被災地を訪れたことも、ボランティアに行ったこともない。最大の理由は、正確に計測して放射線量のデータが公表されていないため、現地に行って、どれくらい被曝するのか不明だからだ。いや、モニタリング・ポストもあり、計測データはあるだろうという人もいるだろう。しかし、そうしたデータが、正しくない、という情報が色々あるために、信用できないのが問題なのだ。そして、被災地をどういうビジョンに基づき復興するのかというコンセンサスすら得られていないため、何をどうするのが良いかを判断できないのだ。

復興ビジョンを早急に構築せよ

復興の構想は大きく分けて三案あるように聞く。最初に出てきたのは、もう二度と津波被害に遭わないように、低地には住宅を建設せず、全ての住宅は高台にだけに建設するというものだ。それに対して、漁業関係者は、やはり港の近くに住んでいないと不便だから、高い防潮堤を作り、以前のように海岸の近くに住むことも認めよというものだ。学者から出てきた最新の提案は、学校、病院、市庁舎、発変電施設などの重要インフラ施設だけは高台に移し、そこへの避難路を作り、住宅は以前の場所に建てても良いというものだ。これらについて、被災者、行政、政治家、学者が集まり、復興後のビジョンを議論して、一刻も早くコンセンサスを得ることを先ずやらなければならないと思う。
更に、福島第一原発の周辺地区は、登記地籍ごとに放射線量を測定した後、(一)居住・農耕ができない強制避難区域、(二)居住・農耕は薦めない避難推奨区域、(三)希望者は避難できる避難支援区域、(四)居住・農耕可能区域、等を早く明確にする必要がある。放射線量の基準値を非常事態のために甘くしたまま、除染が終われば、いずれ帰宅できるような期待をさせている現状は、行政としては間違いだろう。

福島第一原発は最早手が付けられない

東電、政府、経産省、原子力規制委員会、国際廃炉研究開発機構などは明言していないが、福島第一原発には更なる危機が迫っている、と私も参加している民間福島原発事故収束委員会は考えて、緊急声明を一月二十七日に発表した。周辺住民を再度避難させるべき危機的状況なのに、マスコミは報道しない。メルトアウト(炉心漏出)した核燃料が、地下水脈に接触し、核分裂反応が再開する危険があり、大規模な水蒸気爆発が起きる可能性があると収束委員会を代表する立命館大学の山田廣成教授は警告している。東電はこのところストロンチウムの測定データを公表していないが、数値が高すぎて公表できないのではないかと疑ってしまう。
山田教授は事故直後の六月に、水冷式では汚染水がどんどん溜り、処理が困難になるので、鉛による空冷式にすべきだと提案したが、国も東電も聞き入れず、未だに収束するどころか、とうとう第二の危機が迫っている。もう手遅れで、手が付けられない状況になったと判断されると山田教授は指摘している。原爆の約五倍と想定される核燃料のメルトアウトは、従来の百倍以上の量の高濃度汚染水を海洋へ流出させる可能性と、事故当時のような高濃度の放射性物質が大気中に放出される可能性は否めない状況なのである。

事故原発の収束が進まない理由

民間福島原発事故収束委員会が提案している鉛冷却法は、熔けた核燃料を鉛で覆うことにより、放射線を外に出さないことと、汚染水を作らないという利点がある。そんな良い方法なのに、なぜ東電や経産省・国際廃炉研究開発機構は、この方法を検討し、採用しようとしないのかと疑問に思う方も多いと思われる。
経産省は原発事故後、色々な提案を公募して来た。しかし、基本方針を決めていて、それに合う提案しか採用していない。即ち、事故が起きた原子炉と使用済み核燃料は、先ず水で冷やす、そこで出て来る汚染水の処理は新たな方法で実現する、そして冷えた核燃料を取り出し、更に冷えるまで保管してから、六ヶ所村にある核燃料再処理工場に移管する、という考えのようだ。
しかしこれは原発を緊急停止して、核燃料がまだ原子炉内に留まっている場合の処理であって、原子炉建屋のコンクリートも熔かして、地下深くにまで潜り込んでしまった場合は、取り出すことはほぼ不可能だから、諦めるしかないだろう。事故が起きた年の六月に鉛冷却法を検討していたら、ここまで酷い状態にはなっていなかったであろうと思うと、非常に悔やまれる。
それなのに、経産省や東電は取り出すことに拘っているため、鉛で固めて覆う方法には難色を示しているようなのだ。そんなことをしていると、今度は地下で水蒸気爆発が起きるだろうが、ロシアは昨年末に福島の地下で爆発があったことを検知し、警告を発している。
福島第一原発は熔けた核燃料は鉛で固めて全て廃炉にし、石棺化して「人類が制御不能となった原発がここにありき」ということを後世に伝えるためのオブジェにすべきである。


唐澤豊@唐澤塾
東京五輪と福島原発事故収束
以下は日本躾の会の広報誌「ふれあい」の2013年12月/2014年1月合併号に寄稿したものである。

東京五輪と福島原発事故収束

二〇二〇年東京五輪開催が決まった。安倍総理が五輪招致の最終演説で福島事故はコントロールできていると述べたことが、事実とは異なり、国際社会に対して大嘘をついたとされ、世界の目は必ずしも好意的ではなく、辛辣な風刺画が欧州メディアを中心に出ている。また国内でも、福島原発事故が収束していないし、復興の目途も立っていないのに、数千億円もの費用を東京五輪に費やすくらいなら、事故収束、被災地の子どもたちを疎開させる、被災地復興等に使え、という意見もネットの世界では噴出しているが、マスコミはそれらを余り報道していない。
ネットの世界では、五輪開催に疑問を投げたり、批判したりすると、それでも日本人か!一旦決まったことは一致協力して成功させるべきだろう!といった同調圧力が広がっており、戦前・戦中の様相を呈し始めている。
また、二十五年も掛って、やっと野鳥たちの楽園になった葛西臨海公園の一部を、東京都がコンクリートで固めたカヌー競技場にしようとの計画に対し、別の場所に変更せよとの陳情もあるが、多くの都民は知らない。
更に、共産党の東京都議団が都内の放射線量を測定したデータを見ると、臨海地区を中心に、かなり線量が高い地域もあり、世界各国が参加するのだろうか?と疑問視する意見もある。
そうした中、現政権は秘密保全法の成立、TPP締結、消費税増税、といった重要事項を数の力で押し通そうとしている。そのため、東電・政府は、これから福島事故関連で出て来る情報を隠蔽し、それを暴こうとすれば、秘密保全法で封じ込めるのではないか?という憶測がネットの世界で広がっている。
福島原発事故収束の一環として、汚染水の漏洩防止のための遮水壁や原子炉と溶融核燃料の冷却について、国際調達の話が出てきた。
東京五輪、福島事故収束、被災地復興には相当の資金が必要だから、消費税増税は当然だ、という雰囲気が作られ始めている。
これらの事業には米国を中心とするグローバル企業が入札し、TPPを背景に圧力を掛けて落札しようとするだろう。
現在の混乱状況は政治家や官僚の資質の問題とマスコミが機能していないこともあるが、我々国民一人ひとりがこうした問題から目を逸らさず、議論して行き、民主主義を確立する必要があろう。


唐澤豊@唐澤塾



PROFILE
唐澤 豊
  • Author:唐澤 豊
  • 還暦を期に長髪から一気に坊主頭にしました。これから20年間、第2の成人を迎えるまではこれでいこうと思います。でもやっぱり冬は寒いし、夏は暑いので、帽子を愛用しています。
    ●情報通信業界の米国系企業を中心に40年間、営業以外の仕事はほとんど経験。技術以外には、マーケティング・ブランディング、組織論、人事評価制度、企業文化なども経験。今まで3つ会社を始めましたが、被買収・売却などの後、4つ目の会社を後任に任せたところで、一昨年、仲間2人ともうひとつ会社を設立し、非言語コミュニケーションのサービスを開発中です。
    ●経営労働管理士。日本躾の会理事。
    ●音楽(ビートルズ、S&G、フォーク、ニューミュージック等)、グラフィックデザイン、水彩画を趣味とするので、マルチメディア技術の活用に大いに期待しています。読書、宇宙の真理探求が最近の趣味。ストレッチ、真向法、西勝造先生の西式健康法を実践中。
    ●故津留晃一さんの著作や講演録(CD)に触れて「人生の目的は体験することである」ということに納得しています。
    ●詳しいプロフィールは「自己紹介」のカテゴリーにあります。
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