唐澤塾
唐澤豊が情報通信技術+経営術+人生術+創造性を中心に一期一会を追求する私塾
東日本大震災と情報通信
以下は日本躾の会の広報誌「ふれあい」の2011年7月/8月号に寄稿したものである。

東日本大震災と情報通信

三月十一日に東北・関東で連続的に起きた史上最大の地震と津波によりお亡くなりになられた方々のご冥福を祈り、私財・親族等を失った方々には心よりお見舞い申し上げる。巨大地震と津波に伴う福島第一原発の事故は広範囲に渡る放射性物質の拡散という事態となり、大きな問題となっているが、解決には相当な年月が必要とされ、長く続きそうな余震と共に、悩ましい。

さて、先ずは災害発生直後以降に気づいた点を列挙する。

● テレビ・新聞・電話・携帯電話といった情報通信手段よりもワンセグ携帯、ツイッター、電子メール、ラジオが役立った。ツイッターは百四十文字と少ない情報量なので、通信が混雑している状況でも比較的早く伝わり、他の通信手段が使えない状況でも最新情報が入手可能であった。これはテレビ・新聞・雑誌などの原稿を書く個人から直接発信可能なために早いこともあろう。自治体でも若者が自発的に発信を始めたところもあった。これからツイッターは誰でも必要な通信手段となるだろう。ワンセグ携帯でテレビが観られ、ラジオはどこに居ても停電でも聞くことができる。

● 動画も写せる携帯電話の普及で、津波の様子等を多くの個人が記録していた。それらがテレビやインターネットを通じて報道された。また衛星写真も原発の様子などを知るには有効な手段となった。これらにより、広く海外にも瞬時に情報が伝わった。また非常時ということで、テレビ放送をインターネットでも流すことやNHKのビデオ映像をインターネットで視聴できるようにしたことは英断であり、被災地だけでなく多くの人たちに評価された。

● 海外メディアが日本人の災害時対応について高く評価した。我々日本人としては当然のことでも海外の人たちからすると驚異であり、賛辞が絶えなかったことは誇りである。

● 原発事故報道に於いて国内メディアと海外メディアとの温度差があった。これは記者クラブ制度のために海外メディアの記者やフリーランスの記者が記者会見に参加できないから、彼等は別ソースから取材するしかないために起こったことと考えられる。

● 原発事故の国内報道に於いても官邸、東電、保安院の発表に食い違いが生じ、マスコミとその他の報道との温度差もあった。これは縦割り行政の問題、危機管理体制の不備、現場と管理職との乖離、政治家と官僚の対立、学者の派閥対立等が原因だろう。政争の具にされているという指摘もある。

● 被災地の情報と支援も地域差が出た。岩手、宮城、福島、茨城、千葉の太平洋岸地域は津波による被害が大きかったが、マスコミ報道が少なかった地域、また同じ県内でも地域全体が孤立あるいは全滅に近かった地域は通信手段も無く、支援が遅れた。

● 被災地に燃料・食料・日用品など必要物資の供給が滞り、地域差もあった。供給側が物流のためには需要量、需要地、交通情報、燃料、輸送手段等の情報に基づいて計画・手配する必要があるが、通信と交通が分断された被災地からの情報が無いため、あるいは原発事故による屋内退避となった地域に車両が入ることを避けたために、救援物資が届かないことがあった。もっと多くの人や企業がツイッターを使っていたら迅速な支援ができたかも知れない。後に、物流専門企業等の支援で改善されたようだ。

● 外資系情報通信企業とボランティアを中心に、行方不明者捜索の手段など様々な情報提供サイトを短期間に立ち上げ、被災者を支援し、義捐金も集めたことは賞賛される。

● 被災地の外でも食料・日用品・燃料等の買いだめが起きた。他の面では海外から賞賛された日本人の行動であるが、こうした譲り合い精神が欠如した行動は慎むべきであり、悔やまれる。

● 計画停電により交通と企業活動に大きな影響が出た。予期しなかった事態であり、致し方ない面もあるが、もう少し詳細に計画し、告知できなかったのか。

● 外国人を中心に原発からの放射性物質拡散による被曝を懸念して東京から西あるいは国外に移動・退去する動きに対し「東京から逃げるのか!」といった非難が一部で沸き起こった。明確な情報が無かった状況では、祖国に家族・親戚を残して来た外国人が国外退去や関西方面に退避することは責められない。また日本人でも同様に考える人がいても自由であり、それを非難するのは戦前・戦中の全体主義に近いものであり、そうした行為は慎むべきである。

さて、今回の大震災により、経済至上主義の終焉と新しい国家ビジョンの必要性が明確になった。戦後復興、高度経済成長、バブル崩壊、失われた二十年、と日本は結局経済成長のみを追及して来たが、大災害により水の泡と消えた。この大災害の経験を踏まえて、国民総生産ではなく国民総幸福度を追求する時代になたことを認識すべきである。大震災で明確になった課題を解決する新たな国家百年の計とその実現方法を策定・実行することで、日本が世界に範を示す必要があろう。例えば、被災地の復興に際しては縄文時代の地図に基づき、住宅・工場・事務所は一定の海抜以上のところに建設し、それ以下の土地は農地と公園にするくらいのことが必要である。また住宅は堅牢な高層住宅にすれば被災者全員が住むことができ、必要な住宅地は現状より増えることはないだろう。電力は原発は徐々に廃炉にし、分散型の自然エネルギー発電をスマートグリッドで制御する方向に転換すべきである。情報通信では今回、多くの若者を中心としたツイッター、ユーチューブ、ユーストリーム等の利用者が臨機応変に対応したことで、様々な古いしがらみを崩す切っ掛けとなると期待している。


唐澤豊@唐澤塾
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PROFILE
唐澤 豊
  • Author:唐澤 豊
  • 還暦を期に長髪から一気に坊主頭にしました。これから20年間、第2の成人を迎えるまではこれでいこうと思います。でもやっぱり冬は寒いし、夏は暑いので、帽子を愛用しています。
    ●情報通信業界の米国系企業を中心に40年間、営業以外の仕事はほとんど経験。技術以外には、マーケティング・ブランディング、組織論、人事評価制度、企業文化なども経験。今まで3つ会社を始めましたが、被買収・売却などの後、4つ目の会社を後任に任せたところで、一昨年、仲間2人ともうひとつ会社を設立し、非言語コミュニケーションのサービスを開発中です。
    ●経営労働管理士。日本躾の会理事。
    ●音楽(ビートルズ、S&G、フォーク、ニューミュージック等)、グラフィックデザイン、水彩画を趣味とするので、マルチメディア技術の活用に大いに期待しています。読書、宇宙の真理探求が最近の趣味。ストレッチ、真向法、西勝造先生の西式健康法を実践中。
    ●故津留晃一さんの著作や講演録(CD)に触れて「人生の目的は体験することである」ということに納得しています。
    ●詳しいプロフィールは「自己紹介」のカテゴリーにあります。
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